開講にあたり
歯学部を卒業して、有床義歯の教室に10年、卒後臨床研修の教室に8年間残ってきました。臨床において、補綴を中心とする専門治療の中で出会ったのが「インプラント治療」です。当時、インプラント治療はパノラマによる画像診断だけであったため、顎骨形態、下顎管の位置、欠損部と上顎洞との関係などを立体的に把握することが私にはできませんでした。そのため、下顎管麻痺や顎骨外へのドリルの穿孔を考えると、怖くて埋入手術ができませんでした。そんな中、魅せられたのが「CT撮影」や「コンピューターシミュレーション」でした。
しかし、インプラント治療における「CT診断」で、どのようにCT撮影に有効性を見出し、どのようなことに注意をすべきかがわかりませんでした。医科用CTメーカーの技術営業の方や放射線科に残った同級生に話を聞いたり、また医科用CTの専門書を紐解いたりしていく中で、徐々にCTのことがわかってきました。
そもそも私は、教えることが好きで大学に残りました。先輩の先生方から自分が教わったように今度は自分が持っているものを少しでも多く若い先生方に伝えたい、それも理解するまでの時間を自分が要した時間の半分、いや3分の1以上の短い時間で理解してもらいたいという気持ちからです。
現在、隣の国の韓国や中国の歯科医師は猛烈なスピードで勉強しています。そのため今では、近隣諸国に負けないように、中年以上の歯科医師は自分よりも若い世代の先生方に自分の持っている知識や技術の全てを惜しみ無く、それも短い時間で伝えることが日本の歯科医療のレベル向上につながるものと思っています。
これまで、私の理解したCTについての知識を講演会や勉強会、セミナーなどでお話してきました。しかし、聞いていただける先生方の人数には限界があります。一度は本の執筆も考えましたが、本は買わない限り読んでもらうことができません。そこで考えたのが、私の持っているCTの知識をネット上に公開することです。若い先生方を見ると今や時代は図書館で本を調べるよりも、Googleで検索するネット時代のようです。そこで、このサイトをご覧になる先生方には肩を張ることなく見ていただき、少しでもCTについての理解を深めていただきたいと思っています。
しかし、ご注意ください。私も日々CTについては勉強途上のため、間違って理解していることがあるかもしれません。そんな間違った内容をご指摘いただいた場合に、すぐ修正できるのも本と異なるネットの強みです。
私が大阪大学出身ということもあり、医学部の祖となる緒方洪庵の「自分が教える学問に塾生を束縛するのではなく、その学問を利用して一歩先に行け」という言葉に惹かれ、洪庵先生の開かれた「適塾」にならってこのサイト名を「CT適塾」と名づけ、本日開講をします。