通常のドリルは、上顎400rpm、下顎800pm。切歯枝/オトガイ孔前方ループ近傍では1500rpm。
前回の症例供覧は、「オトガイ孔間に何かあるか?」を掲載しました。その際、書ききれなかった「臨床コメント(十河の私見)」を述べたいと思います。
■抜髄:
十河が学生時代の臨床実習では、抜髄をクレンザーで行うインストラクターの先生もいらっしゃいました。 しかし、今ではKファイルなどで抜髄をしている先生が多いのではないでしょうか。 恐らく、クレンザーによる抜髄では神経を引きずりかつ引きちぎってしまうために後疼痛が多く、一方でKファイルなどで神経をスパッと切る抜髄であれば後疼痛が少ないからではないでしょうか。
十河は、切歯枝へのドリリングも同様のイメージを持っています。
■そもそものドリル回転数:
十河がインプラントの講習会をはじめて受講した1990年代半ばにおいては、ファーストドリルは2000-1500rpmが主流でした。 しかし、骨が熱に弱いことを考慮し、また小宮山彌太郎先生(東京都)、南 昌宏先生(大阪府)、船登彰芳先生(石川県)、大谷 昌先生(大阪府)らの講演会や直接お話をお聞きする中から、 現在自分の臨床ではファーストドリルの回転数は高くて上顎は400rpm、下顎は800rpmとしています。
また上顎の最終ドリルでは切削量が少ないので、ほとんど止まってみえる100rpm以下で形成することもありますが、十分に骨を形成できると思っています。 もちろん削りにくければ、回転数を上げればいいわけです。
■切歯枝が見える場合のドリリング:
さて、本題である切歯枝へのドリリングですが、もしCT画像で切歯枝が見えるならば廃用萎縮を起こしているかもしれないものの、抜髄時のように切歯枝に接触するところでドリルの回転数を800rpmから2000-1500rpmに上げてスパッと切ってはどうでしょうか。
■前方ループの最近心のドリリング:
また、下顎管の前方ループの最近心のドリリング(赤矢印のインプラント)では、場合によっては直下に切歯枝が存在する可能性があります。 そのため、「低速回転では神経を引きずるのではないか?」と懸念し、上記の切歯枝が見える場合と同じように前方ループ近傍では回転数を上げてはどうでしょうか?