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症例供覧

【臨床コメント】 翌日に1本の電話

 

押さえどころ

抜糸時(1週間後)にシビレ感を訴えられる患者さん。オペの翌日に1本の電話を患者さんにかけることで、自分への「安心」と患者さんへの「信頼」につながる。

ボトム

 

 下記は、十河がいつもお世話になっている小宮山彌太郎先生(東京都ご開業)が、ご自分のベーシックコースでお話されている内容です。 十河の私見も一部入っているものの、ほぼすべて受け売りトークですが、大事なことなので「臨床コメント」として記載したいと思います。

 

 

■1週間後に訴えられるシビレ感:

 インプラントの手術後5、6日すると、シビレ感(麻痺感)を訴えられる患者さんがいらっしゃいます。その際に考えるべき原因は2つあり、1つはドリルやインプラントの下顎管への接触による「神経麻痺」、 もう1つは反応性の浮腫による「一時的なシビレ感」です。「一時的なシビレ感」は、インプラントの手術という外科的侵襲によって反応性の浮腫を起こし、その浮腫によって神経を圧迫するシビレ感です。

 シビレ感を確認できたのが1週間目であれば、どちらを原因としたものかを究明するために、早速、CT撮影を行います。インプラント体と下顎管の接触状態をCT画像で確認しますが、幸いにも両者が非接触であればまずは一安心です。 ビタミン剤の投薬やソフトレーザーなどの保存療法を行い、経過観察をしていくことになるでしょう。

 しかし、一時的なシビレ感だとわかっても、「本当にシビレ感は消失するのだろうか?」などと、なかなか落ち着いた気持ちにならない日々が続くことでしょう。

 そこで、抜糸時に患者さんが訴えられる「シビレ感」の不安を無くすためにも、是非、手術翌日、患者さんに電話を1本入れてみてください。

 

■翌日の電話問診で「シビレ感なし」を確認する:

 翌日の電話による問診時にシビレ感(麻痺感)があれば、それは下顎管の「神経損傷」を疑わないといけません。スグに患者さんに来院していただき、CT撮影によってインプラント体と下顎管との接触状態を確認します。

 一方、もし翌日シビレ感がなければ、今後下顎管の神経麻痺を起こすことはありません。 しかし、上述のように手術後4-5日して、反応性の浮腫による神経圧迫でシビレ感を誘発することがあります。そのため患者さんには「数日後、骨の中でも腫れが起こり、神経が少し圧迫されてシビレ感が出るかもしれません。しかしそのシビレ感は腫れが無くなると消失するので全く心配は入りません。」と、これから起こる可能性を先に説明しておくと患者さんも安心されることでしょう。

 

■具体的な問診:

 少し具体的な問診について、お話をします。 問診の順序は医療上本質的な問題ではないかもしれませんが、翌日電話口でいきなり「シビレていませんか?」という言葉で会話を始めると、患者さんの不安をあおることになります。 そのため、まずは一般的な問診から行なってください。「頓服の痛み止めは飲まれましたか?」「今もお痛みは残っていますか?」「昨日は十分冷やされましたか?」「今、腫れはどうですか?」「今、出血はどうですか?(上顎では鼻血などは出ていませんか?)」などと ①疼痛、②腫脹、③出血の問診をした後に、「手術の数時間後に麻酔が切れたと思いますが、その後にシビレ感などはないですか?」とお聞きください。 特に若い先生方には、細かいことですが患者さんへの「言葉の思いやり」を歯科医師として常に持って欲しいと思っています。

 
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