正確に言うとCT値でわかるのは「骨質」でなく「骨密度」。
十河の造語では骨密度のことを「臨床的骨質」と名付けている。
2001年に米国国立衛生研究所(NIH)のコンセンサス会議で「骨粗鬆症」が定義されました。「骨粗鬆症は“骨密度”および“骨質”の低下により“骨強度”が低下した全身性疾患である。」とのことです(斎藤 充:骨粗鬆症の新たな展開 )。言い換えるとまさに「骨質は骨密度以外の骨強度因子群の総称である」と提唱されました (斎藤 充:THE BONE Vol.24 No.3, 19, 2010)。すなわち、「骨密度≠骨質」を意味しているのです。もう少し細かい言葉の定義を説明すると、“骨密度”とは単位面積・体積あたりの「ミネラル量」を示し、“骨質”とは骨の幾何学形状や微細構造などの「骨構造」、「骨代謝回転」、さらには「骨器質の材料特性」を意味するそうです。なかなか正確な定義は難しいです。
骨粗鬆症における「骨強度」の定義。米国国立衛生研究所(NIH)のコンセンサス会議, 2001より解りやすく図を作成。 |
さて、ここで「えっ?CT値は骨密度が見れる、すなわち骨質がわかるのではないの?」と混乱された先生もいらっしゃるのではないでしょうか?
十河は約10年ほど前から、「医科用CTが示す画像濃度値、すなわちCT値によって骨の硬い・軟らかいがわかります!」と言い続けてきましたが、このことはインプラントで著名な菅井敏郎先生に教わりました。まさにそれがMischの分類です。そのため、「CT値で骨質がわかる!」と言い続けてきましたが、正確に言うと「CT値で『臨床的』骨質がわかる!」と言ってきました。というのも、十河は臨床をする上で、骨の硬い・軟らかいを示す言葉として「骨密度」も「骨質」も大差はないと感じています。そのために骨密度のことを、「臨床的骨質」と呼び、少し言葉が長く感じるために「臨床的」という部分を省くことが多いのです:深謝)。
しかし先日の第44回インプラント学会のシンポジウムで、澤瀬 隆教授(長崎大・インプラント科)が骨質の正確な定義をお話になられたのでこの章を設けてみました。ということで、CT値では正確な定義の「骨質」は見れません。見れるのは「骨密度」です。
これからは自分自身にCT値でわかるものを「骨密度」と正しく言うか、もしくは十河が作ってしまった表現「臨床的骨質」という言葉で「臨床的」を忘れずに使いたいと思います!(2014年9月28日記)。