医科用CTでは、「うちのCT装置は4列のCTだ。」というように、『列数』という言葉をよく耳にします。「4列のCT装置」と聞いてすぐに思いつくのは、「検出器の素子が4列並んでいる。」という状況です。もちろんイメージ的にはそう考えても問題はありませんが、正確にいうと違います。本章と次の章(4列のCTは「4DAS(4つのデータ収集機構)」のCTを意味する)では医科用CTの『列数』について説明します。
図1をご覧ください。オレンジの吹き出しの中は「モジュール」と呼ばれる検出器の一部の模式図で、図2のように弓状の医科用CTの検出器を構成している部材です(参照:医科用CTの検出器と撮影スライス厚)。 10年以上前、十河が医科用CTの勉強をはじめた頃は最新機種では8列、16列のCTもあったものの4列のCT装置が全盛で(※)、図3のように「モジュールはメーカーによって異なる」と本に書かれていました 。
モジュールの一例として、東芝メディカルシステムズ社の4列のCT装置のモジュール(図1)で説明します。4列のCT装置において、モジュールは体軸と垂直な方向で頭の側ならびに足の側に1mm幅の素子が15列づつ、また真ん中は0.5mm幅の素子が縦に4列並び、合計34列の素子が1つのモジュールに縦並びしています。すなわち、4列のCTは素子が4列縦に並んでいる訳ではありません。
もう少し話を続けます。この東芝メディカルシステムズ社の4列のCTに搭載されているモジュールで最もこまかくCT撮影をしようとすると、管球が1回する間に撮影できる範囲は「0.5mm(最小撮影スライス厚)×4列=2mm」の幅となります。いくら「ヘリカルCTは寝台が動くことで撮影範囲を広く設定できる。」といっても、肺や肝臓といった大きな臓器の撮影には時間がかかります。そこで検出器の幅を増やす必要がありますが、あくまでも4列のCTです。一度に収集できるデータは4つであること( 詳細は「4列のCTは「4DAS(4つのデータ収集機構)」のCTを意味する」で説明します)、(フェルトガンプの再構成いわゆるコーンビーム再構成ではなく)ファンビーム再構成の適応範囲を考えると検出器の幅には限界があります。さらに医科領域では耳鼻科などを除いて1mm以下の病変を発見しても処置にはあまり至らないことが多いためか 、画像の細かさを多少犠牲にしても同じ検出器でより広く撮影できる範囲をモジュールの幅でまかなうように開発されました。東芝メディカルシステムズ社のこのモジュールであれば管球1回の間に撮影できるのが32mm幅となり、32mmを4で割った8mmが最も粗く撮影した時の撮影スライス厚となります。
※)全身用X線 CT装置 Asteion™ Super4 Edition - 東芝